2016年に公開された、新海誠監督による長編アニメーション映画『君の名は。』
17歳の高校生、瀧と三葉。
住む場所も家族も、まったく違う環境で生きてきたふたりが、ある日突然、夢の中で入れ替わる――。
最初は戸惑いながらも、都会での刺激的な暮らしや新しい人間関係を通じて、次第に互いの存在を意識しはじめる。
そんな中、テレビでは「1200年に一度地球に接近する彗星」が、1か月後に観測されるというニュースが流れ始める。
場所も時間も越えてつながる、ふたりの奇跡の物語。
※本文中のアニメ場面・セリフは© 2016「君の名は。」製作委員会/東宝株式会社/コミックス・ウェーブ・フィルムより引用しています。
はじめての東京。君の身体で体験する都会の生活|2016年9月5日(月)
新宿の風景|初めて見る都会の朝


朝7時34分。
田舎暮らしに憂鬱を感じ、都会への憧れを抱く三葉。
スマートフォンのアラームで目を覚まします。
しかしそこは、見知らぬ部屋、見知らぬ身体――。
キッチンで父に声をかけられたとき、テーブル上のタブレットには8時45分の表示。
つまり、目覚めてから状況を理解するまで、1時間以上が経過していたことになります。
スマートフォンの画面から、日付が「9月5日(月)」であることも確認できます。
突然の出来事に不安と戸惑いを抱えながらも、身支度を整えた瀧(中身は三葉)。
玄関を開けたその瞬間――目に飛び込んできたのは、初めて目にする東京の都市風景でした。
9時32分、瀧(中身は三葉)は新宿駅南口に到着。バスタ新宿を右手に見ながら、甲州街道を東へと歩いていく様子が描かれています。
正面には新宿四丁目交差点が見え、さらに進むと、風景は新宿大ガード東交差点へと移り変わっていきます。
このシーンでは、新宿の活気ある街並みの中を、都会の喧騒に包まれながら、嬉しそうに歩く彼の姿が印象的です。
カフェ ラ・ボエム 新宿御苑|アルバイト先のレストラン

このレストランのモデルは、新宿御苑近くにある「カフェ ラ・ボエム 新宿御苑」とされています。
外観はもちろん、内装の階段や照明、椅子のデザインに至るまで、細部までよく再現されています。
補足:アルバイト先の店名について
瀧が働いているアルバイト先は、作中ではイタリアンレストラン「IL GIARDINO DELLE PAROLE」。
これはイタリア語で「言の葉の庭」を意味し、新海誠監督の過去作へのオマージュであることがうかがえます。
補足:作中でのアルバイト先の場所について
アルバイトからの帰りの電車の中、瀧はスマートフォンで自宅までの乗り換えを検索しており、画面には、次のような乗り換え案内が表示されていました。
22時32分 JR恵比寿駅発(山手線 外回り)
22時40分 代々木駅着
22時44分 代々木駅から総武線千葉方面行きに乗車
3駅目で下車(乗車時間6分)
この乗り換え案内から、瀧のアルバイト先はJR恵比寿駅周辺であると推測できます。
さらに、22時17分には奥寺先輩のスカートの破れを裁縫し、先輩からお礼の言葉をかけられる場面がありました。この時間をもとに考えると──
- 22時17分:アルバイト中の店内(=レストラン)にいた
- 制服から学生服へ着替える時間を約5分と想定
- レストランを出たのは22時22分ごろ
- そこから恵比寿駅を22時32分に出発するには、徒歩10分以内の距離である必要があります
以上のことから、瀧のアルバイト先はJR恵比寿駅から徒歩10分以内のレストランであると考えるのが自然でしょう。
主題歌とともに|都会の風景
RADWIMPSの楽曲「前前前世」が流れるシーンでは、瀧の日常を彩る都会の風景が次々に映し出されます。


新宿警察署裏交差点、四ツ谷駅、明治神宮外苑、新宿大ガード東交差点など、都心の景色がリズミカルに切り替わり、都会の喧騒と疾走感が印象的に描かれています。
奥寺先輩との都会的なデートコース|2016年10月3日(月)
瀧の自宅周辺|静かな住宅街

午前10時15分。奥寺先輩からの連絡で、まさかのデート当日であることを知った瀧。
慌てて準備をして家を飛び出しますが、自宅前の静かな住宅街の風景が映し出されます。
この場所は、新宿区若葉1丁目の朝日橋の付近です。
四ツ谷駅前|奥寺先輩との待ち合わせ

集合時刻は10時30分、場所は四ツ谷駅前。
瀧の自宅から四ツ谷駅まではおよそ750メートル。急いで支度をして走れば、ギリギリ間に合う距離です。
国立新美術館「サロン・ド・テ ロンド」

瀧と奥寺先輩は六本木ヒルズの展望台で東京のパノラマを楽しんだ後、
続いて向かったのが、曲線的なフォルムが印象的な建築──国立新美術館です。
ふたりが立ち寄ったのは、館内2階にあるカフェ「サロン・ド・テ ロンド」。
ガラスとコンクリートに囲まれた円形空間に設けられたカフェは、まさに現代アートと融合したような非日常の空間です。
どこを切り取っても現代的で洗練された都会のデートスポット。場違いに感じるほどにおしゃれな雰囲気に、瀧はどこか落ち着かず、少し浮き足立っている様子が描かれています。
信濃町駅前|都会のシルエット

デートの帰り道、夕暮れ時のシーンでは、信濃町駅前から望むNTTドコモ代々木ビル、パーク ハイアット東京が印象的に描かれ、都会の空気と時間の流れがしみじみと伝わってきます。
信濃町歩道橋|時のねじれ

デートが終わり、瀧は奥寺先輩と信濃町歩道橋で別れます。
慣れないデートに気疲れした瀧がスマートフォンで時刻を確認したのは17時23分。
瀧は三葉に電話をかけますが繋がりません。
東京を探して、あなたを探して。三葉、運命の旅へ|2013年10月3日(木)
東京駅|大切な人を探して

この日、三葉は瀧に会うため、岐阜県の糸守から東京へと向かいます。
東京駅の構内案内板が映るカットでは、不慣れな土地で必死に瀧を探す三葉の姿が描かれます。
信濃町歩道橋|繋がらない電話

なかなか見つからず、信濃町歩道橋から瀧に電話をかけても繋がりません。
代々木駅|君を探していた

都内を歩き回った末に、三葉がたどり着いたのは代々木駅。
ホームのベンチに座って待つ彼女の姿には、不安と希望が交錯しています。
やがて到着する中央線・各駅停車 千葉行きの電車に、瀧が乗っていると気づき、三葉は電車に乗り込みます。
時は流れて、就職活動|2021年10月4日(月)
新宿センタービル

月日が流れ、あれから5年――瀧は22歳になっていました。
就職活動のために彼が訪れたのが、新宿センタービルです。
奥寺先輩との散歩コース|2021年10月4日(月)
四ツ谷駅

瀧は奥寺先輩からのLINEを15時40分に受け取り、四ツ谷駅で待ち合わせます。
10月4日(月)であることは瀧のスマートフォンの画面から分かります。また、瀧が「糸守に行ったのは5年前」と語っていることから、この日は2021年であることがわかります。
弁慶橋を歩いて

ふたりは四ツ谷駅から南へ歩き、弁慶橋を渡ります。
川沿いに続く石垣と、ゆったりと浮かぶ手漕ぎのボート。
東京の中心にありながら、どこか懐かしさを感じさせる風景が広がっています。
ホテルニューオータニと首都高の下で

さらに歩を進め、ふたりは首都高速4号新宿線の高架下へ。
瀧はふと、過去の出来事に思いを馳せながら静かに語ります。
右手には、重厚で個性的な外観を持つホテルニューオータニ東京。
その姿が、夕暮れの光を受けて映し出されます。
再び、四ツ谷へ

ふたりは喰違見附跡付近で四ツ谷駅方面を眺めます。
喧騒の中にある東京の一角で、ふたりだけの静かな時間が流れていきます。
信濃町駅から新宿の夜景を眺めて

ふたりは想い出話を語りながら瀧の自宅付近を通り過ぎ、信濃町駅付近まで歩きます。
新宿の象徴的な建造物であるNTTドコモ代々木ビルが目に入ります。
信濃町歩道橋での別れ
そして最後に――信濃町歩道橋の上で別れます。
まるで、過去と現在を優しくつなぎ合わせるような、静かで温かな時間でした。

新宿の冬空の下で|2021年12月3日(金)
スターバックス新宿サザンテラス店 | カフェでひと息

冬の東京。
街にはクリスマスの飾りが灯りはじめ、どこか浮き立つような空気が流れていました。
友人たちが次々に就職先の内定を決めていく中、瀧はまだ手応えを感じられず、焦りと不安が静かに広がっていきます。
瀧が開いた手帳には「2021年12月3日」の文字。
その日、彼が立ち寄ったのは、雨に濡れた地面に緑色の「STARBUCKS」のネオンが反射するカフェ。
店内の窓越しには、イルミネーションで飾られた植物や特徴的な街灯が見えます。
そして、手帳には「新宿」の文字。
これらの描写から、舞台となっているのは「スターバックス新宿サザンテラス店」であることがわかります。
新宿西口、新都心歩道橋|運命のすれ違い

この日、東京には淡い雪が舞っていました。
瀧が歩くのは、新宿西口・損保ジャパン本社ビル前の新都心歩道橋。
高層ビルが立ち並ぶその風景の中で、彼の心もまた、どこか晴れないまま時間が過ぎていきます。
そのとき――。
歩道橋の上で、三葉もまた、反対方向から歩いてきます。
お互いに顔を伏せたまま通り過ぎようとしたその瞬間、
何かが胸の奥でふるえるような感覚。
ふたりは足をとめて振り返りますが、
しかし、タイミングは合わず、そのまま背中を向けて離れていきます。
時を超えて想いが重なるとき|2022年 春
春、再び動き出す物語
あの日から、季節が変わり、東京にも春が訪れました。
桜が咲き始めた暖かなある日。
瀧と三葉、それぞれの人生を歩んできたふたりの時間が、再び重なろうとしていました。
すれ違う電車、重なる想い
瀧は中央線快速に、三葉は各駅停車に乗っていました。
車窓から、大切な誰かを見つけたような気がして──
お互いに理由も名前も分からないまま、ただ「会わなければ」と強く感じ、次の駅で電車を降ります。
けれど快速と各駅停車。ふたりが降りたのは別々の駅。
新宿駅南口|瀧が降りた駅

瀧が降り立ったのは、新宿駅南口。
改札を抜けると、彼は甲州街道を東へと走り出します。
誰を探しているのかも、なぜ走っているのかも分からない。
ただ、胸の奥の衝動だけが彼を突き動かしていました。
千駄ヶ谷駅|三葉が降りた駅
一方、三葉は千駄ヶ谷駅で下車します。
名前も記憶もないまま、けれど確かな「何か」を感じて、
彼女もまた走り出すのでした。

須賀神社へと続く道

やがて、三葉の目の前に現れたのは、
「須賀神社入口」の小さな看板。
そこから北へ、須賀神社を背にして走り抜けていくのが分かります。
須賀神社|ふたりが再び出会う場所

ふたりがついに出会うのは、須賀神社の男坂です。
瀧は、坂の下──つまり北側から
三葉は、坂の上──南側から
お互いを目指して階段ですれ違います。
名前も、理由も、思い出せない。
けれど、「この人だ」と心が叫ぶ。
ただ一言、「君の名前は……」と重なった声。
その瞬間、時を越え、場所を越え、心がようやく重なります。
主題歌
RADWIMPS「夢灯籠」
RADWIMPS「前前前世」
RADWIMPS「スパークル」
RADWIMPS「なんでもないや」
※当記事は映画『君の名は。』の作品世界およびロケ地紹介を目的とした非公式ファン記事です。
※掲載された地名・施設情報は取材時点のものであり、実際の訪問の際は各施設の公式情報をご確認ください。