『ガールズバンドクライ』聖地巡礼 第1話【girls band cry Pilgrimage Guide】

アニメ聖地巡礼

叫びたくなるほどの想いを、音にのせて――『ガールズバンドクライ』

2024年に放送が始まったこのアニメは、感情をぶつけるようなバンドサウンドと、夢と現実の狭間で揺れる少女たちの生きざまを描いた、等身大の青春ドラマの新たな傑作です。

物語の主人公・井芹仁菜は、居場所を失い、東京へ飛び出してきたひとりの少女。
彼女が出会うのは、同じように心に空白を抱えながらも、音楽にすべてをぶつけて生きようとする仲間たち――。

不器用な言葉と、不安定な日常。その中で見つけた、「本気のバンド」。
彼女たちの音楽には、うまく生きられない誰かの「今」が込められています。

都会の片隅にある何気ない風景、駅前の階段、古びたライブハウス、夕暮れに染まる高架下――
そんな日常の景色が、この作品では、物語の中でかけがえのない場所へと変わります。

私たちの現実の生活は、理想とはかけ離れていて、人生はうまくいかないことばかり。
でも、そういう未完成な自分でも、そのまま肯定して、前を向かせてくれる。
そんな力を持ったアニメが、『ガールズバンドクライ』です。

この記事では、そんな彼女たちが駆け抜けた東京と川崎のロケ地を、実際の写真とともに紹介していきます。
音楽と情熱、そして孤独が交差する街を一緒に歩いてみませんか??

※本文中のアニメ場面・セリフはすべて『ガールズバンドクライ』(©東映アニメーション)より引用しています。

第1話 聖地巡礼|東京から川崎へ、仁菜の“はじまり”をたどる旅~

東海道新幹線(Tokaido Shinkansen)

作中で、主人公・仁菜が熊本から東京へ向かう際に乗っていたのが、東海道新幹線です。
熊本駅から東京駅までは、およそ6時間弱の長旅。
仁菜はこの車内で、どんな思いを胸に抱えていたのでしょうか――想像がふくらみます。

車内では、「この列車は折り返し17時54分ひかり…」というアナウンスが流れていました。
このことから、仁菜は昼ごろに熊本を出発したのではないかと推測されます。

彼女が座っていたのは、「2号車 2E席」。
次に東海道新幹線を利用する機会があれば、ぜひこの席に座って、仁菜と同じようにイヤホンで『空の箱 -桃香ver.-』を聴きながら、物語のワンシーンに心を重ねてみてはいかがでしょうか。

東京駅(Tokyo station)

JR東京駅の改札を出て、ふと上を見上げると広がるのが、東京駅丸の内駅舎の美しいドーム。
作中では、仁菜が新たな一歩を踏み出す場面で登場し、まるで彼女の「再出発」を象徴するかのような印象的なシーンとなっています。

丸の内駅舎には、南口と北口の両方にドームがあります。
仁菜が立っていたのは、果たしてどちらのドームだったのでしょうか――。

現地を訪れた際には、ぜひ両方のドームを見比べてみてください。
どちらにも、旅のはじまりにふさわしい荘厳さと、未来へ向かう希望が込められているように感じられるはずです。

横須賀線(Yokosuka Line)

東京駅からさらに移動を続ける仁菜が、横須賀線の車内でスマートフォンを構えるシーンがあります。
窓の外には、静かに雪が降り積もる町並み。時刻は18時30分ごろ。

夕方の電車に揺られながら、少しずつ新しい土地へと向かう感覚。
この時間帯に同じ路線に乗ってみると、仁菜と同じ景色が見えるかもしれません。

南河原公園(Minami-kawara Park)

作中に登場する看板に描かれた公園の形状を手がかりに調べた結果、モデルとなったのがこの南河原公園です。

不動産屋はすでに閉まり、鍵も受け取れないまま。新居の場所もわからず、辺りはすっかり暗くなっている――
見知らぬ土地でたったひとりの仁菜の、不安げな様子が描かれています。

実際に訪れてみると、街の中にあるとは思えないほど静かで穏やかな空気に包まれた場所。
不安と希望のあいだで揺れる気持ちに、そっと寄り添ってくれるような空間です。

南河原公園入口交差点(Minami-kawara Park Entrance Crossing)

南河原公園の南端を東から西へ抜け、第二京浜沿いを歩いて北上していくと、やがて見えてくるのが南河原公園入口交差点。
作中の仁菜が歩いた道をたどるように、この交差点を渡ったとき、不思議と作品の中に入り込んだような感覚になります。

信号の点滅や車の走る音までもが、物語の一部に思えてくるから不思議です。

さいわい緑道(Saiwai Green Path)

交差点を越えてさらに西へ進むと、街の喧騒がふっと遠のき、静かな小道が姿を現します。
それが、さいわい緑道です。

木々に囲まれたこの細い道を、仁菜はひとり歩いていきます。
作中では、慣れない都会で声をかけても素通りされ、そっと肩を落とす彼女の姿が印象的でした。

現実の緑道もまた、少し寂しくて、けれどどこか温かい場所。
歩いていると、仁菜の心の揺れや、小さな決意に、そっと触れられるような気がします。

冨士の湯(Fuji no Yu)

「ゆサウナ」の標識を手がかりに、仁菜が歩いていたのは、冨士の湯(鶴見区矢向3丁目)の西側。北へと足を進めていたことがわかります。

夜道にぽっと浮かぶ銭湯の明かりは、見知らぬ街をさまよう仁菜にとって、一瞬だけでも心の灯になったのかもしれません。

矢向湯(Yakou-yu)

矢向湯(鶴見区矢向5丁目)の北側では、仁菜が東から西へと移動している様子が描かれています。

一見するとやや不自然なルートですが、ここまでくると確信できます――仁菜は完全に迷っているのです。

道順だけでなく、どこか心細げな背中にも、作中では語られない不安や焦りがにじみ出ています。

蕎麦店「相馬」(Soba Restaurant “Souma”)

川崎市幸区戸手本町2丁目にある、実在の蕎麦店「相馬」。

登場シーンは一瞬ですが、店頭に掲げられただるまや外観のディテールから、この場所であることが特定されました。

不慣れな街をさまよう仁菜の背景に、地元の飲食店がさりげなく映り込むことで、物語に生活の温度感が加わっています。

ロケ地巡りの合間に立ち寄ってみるのもおすすめ。
仁菜も、もしかしたらたまにはここに立ち寄って――そんな想像をしながら、お蕎麦をすすってみてはいかがでしょうか。

丸福珈琲店 川崎アゼリア店(Marufuku Coffee – Kawasaki Azalea)

仁菜が桃香のライブが近くで行われていると知り、丸福珈琲店 川崎アゼリア店を飛び出したのは、22時35分。

スマートフォンの画面に表示された時刻が、その瞬間の“リアル”を感じさせます。

深夜の川崎の街を駆ける仁菜の姿からは、彼女の衝動と、助けられた音楽――桃香へのまっすぐな思いが伝わってきます。

川崎アゼリア(Kawasaki Azalea)

桃香の歌声とギターの音色が、仁菜の全身を突き抜ける――。
これまで辛いときも共に過ごしてきた桃香の歌、ずっとイヤホン越しに聴いてきた桃香の音楽を、初めて“生”で耳にした瞬間。
その衝撃と感動は、言葉では言い表せないほどのものでしょう。

上京して間もない仁菜の心に押し寄せる不安や孤独を、桃香の生の歌声がやさしく包み込み、そっとかき消していく――
この場所で鳴り響いた音は、仁菜にとって忘れられない「希望の音」になったのかもしれません。

仲見世通り(Nakamise Street)

路上ライブのあと、バンドの男女ふたり組に絡まれた仁菜と桃香。
思わず走り出した二人が逃げ込んだのが、賑やかな仲見世通りでした。

狭く入り組んだ通りに灯るネオンの明かりと、どこか懐かしい下町の空気。
ただの逃走劇でありながら、二人の関係性をグッと近づけるターニングポイントにも感じられる場面です。

川崎区元木交差点(Motoki Intersection, Kawasaki Ward)

二人が走って逃げ込んだのは、川崎区元木交差点。
その距離、およそ1.2km――。
ギターケースを背負ったまま走った桃香にとっては、かなりの運動量だったに違いありません。

それでも辿り着いたときには、どこか楽しげに笑顔を交わしながら見つめ合うふたりの姿が印象的でした。
思いがけないアクシデントだったけれど、それがむしろ、仁菜と桃香の距離をぐっと近づけてくれたのかもしれません。

吉野家(Yoshinoya)

このあと、仁菜と桃香のふたりは、ルパと智が働く吉野家で食事をするシーンへと移ります。

吉野家公式サイトによれば、川崎市内には2025年5月時点で18店舗があるとのこと。
このシーンでは情報が限られているものの、看板の位置(店舗入口の右上)や、2階部分のタイル、縦長の窓といった外観の特徴から、「川崎西口店」である可能性が高いと推察されます。

つまり、ふたりは川崎駅東側のアゼリアを出発し、仲見世通りを抜け、南の元木交差点まで逃げたあと、再び西口側まで戻ってきたということになります。作品に描かれた足取りをたどってみると、地図上での位置関係がよりリアルに感じられるかもしれません。

店内では、仁菜が牛丼を食べ終える場面で時計が一瞬映りますが、針はぼやけていてはっきりとは確認できません。
ただ、桃香の「ぼちぼち終電かあ」という一言から、時刻は0時前後と考えるのが自然でしょう。

ロケ地巡りの途中で、実際の吉野家に立ち寄ってみるのも楽しみのひとつ。
もっとも、桃香のようにビールだけ頼むのは、できれば真似しないようにしたいですね。

桃香の家(Momoka’s house)

桃香と仁菜は、吉野家で食事を終えたあと、桃香の家へと向かいます。
ここでひとつ気になるのが、「桃香の家はどこにあるのか?」という点です。

劇中の動きから推測すると、桃香の家は川崎駅の西側にある可能性が高いと考えられます。

というのも、もし桃香の家が川崎駅の東側にあるのであれば、ふたりが向かう吉野家は、川崎駅東口側にある「川崎駅前店」のほうが自然なはずです。
にもかかわらず、実際にふたりが訪れたのは、西口側にある「川崎西口店」とみられる店舗でした。

もちろん、川崎アゼリアでトラブルに巻き込まれた男女2人組と再び鉢合わせするリスクを避けるため、西側へ移動したという可能性も考えられます。
しかし、ギターケースを抱えて1.2kmほども走ったあとに、わざわざ川崎駅西側の吉野家に寄り、そこからまた駅東側の自宅へ戻るという行動は、やや不自然に感じられます。
この点から考えても、桃香の自宅は西口側のエリアにあると見るのが妥当でしょう。

そして、吉野家を出たふたりが桃香の家へと向かうシーンでは、いくつかの視覚的な手がかりも描かれています。
ふたりが歩くのは幅6mほどの生活道路。その先には、10階建てほどのマンションが見えています。
通りには白いダイヤマーク(横断歩道帯の予告表示)があり、左右に街灯も設置されています。
また、道沿いには「さかえ地所部」と読める不動産会社らしき看板も確認できますが、これをインターネットで検索しても、現時点では有力な情報は得られていません。

残念ながら、現段階ではこのシーンの具体的なロケ地を特定するには至りませんでした。
ただ、描写された環境や地理的な整合性から、桃香の家が川崎駅西口エリアに位置する可能性は、かなり高いと見てよいでしょう。

幸区都町交差点(Miyakocho Intersection, Saiwai Ward)

仁菜が桃香の家を飛び出し、ため息をついた場所――それが「幸区都町交差点」です。

アニメでは、第二京浜(国道1号線)を北側から南側に向かって映した構図になっており、仁菜は画面手前側(北側)に向かってうつむいて立っています。
そこへ桃香が、忘れていった仁菜のスマートフォンを持って追いかけてくるのですが、その登場位置は画面の左側――つまり交差点の東側から登場しています。

このカットから読み取れるのは、桃香の家が幸区都町交差点の東側にあるということです。
さらに、前シーンでふたりがいた吉野家が川崎駅西口店(川崎駅の西側)であるとすれば、桃香の家の位置は、「川崎駅」と「都町交差点」の間ということになります。
つまり、おおまかにいえば、川崎駅西口エリアと都町交差点を結ぶ線の中間地帯――この範囲が桃香の自宅の可能性が高いエリアだと考えられます。

では、その中でも具体的にどの辺りなのか?
ヒントとなりそうなのが、吉野家を出たあとの歩く方向です。作中では歩き出す方角は明示されていませんが、推測は可能です。

吉野家川崎西口店の東側には大きな商業施設や駐車場が多く、住宅地が少ないのに対し、西側には中層住宅や集合住宅が多く立ち並ぶエリアが広がっています。
この点から考えても、ふたりは川崎駅を背にして西側へと歩き出した可能性が高いと言えるでしょう。

吉野家と都町交差点の間の距離は約700m。徒歩10分程度の距離です。
ふたりが歩いた道筋に関しては、Googleマップなどで調べてみたものの、劇中に描かれた風景と一致する場所は現時点では特定できていません
ただ、生活道路の幅、街灯、マンションの高さ、一軒家の外観といったディテールを元に、今後さらに調査が進む可能性はあります。

少なくとも、桃香の家は――
川崎駅からもそれほど遠くなく、深夜でも女性ふたりが歩いて帰れる距離感。
生活感のある、静かな住宅街の一角にあると考えるのが自然です。

南河原公園(Minami-kawara Park)

仁菜と桃香は、幸区都町交差点の歩道橋で少し言葉を交わしたあと、そのまま二人で「南河原公園」へと向かいます。

見知らぬ土地で、少しずつ芽生えていくつながり。

せっかく出会えた二人の絆が深まりかける一方で、バンドをやめた桃香は、旭川へ帰ろうとしている――上京してきた仁菜との間に、すれ違いの予感が静かに漂います。

南河原公園の穏やかな佇まいが、そんな二人の思いをそっと受け止め、静かに包み込んでくれるのです。

ビッグエコー(BIG ECHO)

南河原公園のあとは、ふたりでカラオケへ。

訪れたのは「ビッグエコー川崎東口駅前店」(川崎区駅前本町6-3)。現在は閉店。
駅からすぐの立地にあるこの店舗で、仁菜は桃香に背中を押されるようにして初めて歌声を披露します。

長い一日の締めくくりに、歌うことで少しだけ心が軽くなった仁菜。
このカラオケルームの一角が、彼女の大きな一歩を支えてくれた場所となったのです。

川崎ミューザデッキ(Kawasaki Muza Deck)

自宅を飛び出し、雨の中、桃香のギターを抱えて走る仁菜。
その道のりは、南河原公園入口交差点、幸区都町交差点、吉野家川崎西口店、そして川崎ミューザデッキへと続いていきます。

転んで、服が濡れても気にせず、仁菜はひたすら前を目指します。

川崎アゼリア(Kawasaki Azalea)

もしかしたら、もう一生会えないかもしれない。
それでも、桃香にはバンドを続けてほしい。
「負けない」と決意して、昨日上京してきた自分だからこそ――桃香にも、「負けないでいてほしい」と。
仁菜は、心の底からそう願っていたのです。

そして、アゼリアのステージで響き渡った、仁菜の歌声。
それは、自分自身を奮い立たせ、桃香の心を呼び戻すための、真っ直ぐで必死な叫びでした。

昨日まで、ただ一人のファンだった少女が――
いま、自分の声で、誰かを救おうとしている。
その声は、不器用で、ぎこちなくて、それでもまっすぐで、正直で――何ひとつ飾りのない、本物の気持ち。

だからこそ、心に刺さるのです。

サビに差しかかったその瞬間、空から舞い降りていた雨粒が、ふわりと空中で止まりました。
まるで、そこだけ時間が止まったかのように――。
仁菜の歌声が、世界を包み込むように響きます。
そして、歌が終わると同時に、雨粒は一斉に重力を取り戻し、静かに、音もなく落ちていくのです。

まるで、夢を諦めかけていた桃香を、その場に留め、終わらせまいとする仁菜のこの一曲、この一瞬に込めた祈りが、時間さえも止めてしまったかのような――そんな瞬間。

それは、魂を込めた、本気の想いでした。

その歌声は、きっと桃香の心に。
そして、私たちの心にも――確かに、届いていたのです。

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