日米関税交渉の行方と日本自動車産業への影響(2025年6月1日)

コラム

4回目の日米関税協議を終えて

赤澤亮正経済再生担当大臣は、米国のベッセント財務長官らと4月16日に第1回協議を実施し、その後協議を重ね、5月30日に第4回目の協議を行いました。

帰国後、記者団の取材に対し赤澤大臣は以下のように語りました。

「これまで4回にわたる私の訪米及び日米間の協議を通じて、日米がこれまで以上に互いの立場を十分に認識するとともに合意に向けた議論が進展をしていることを確認できました。」

「6月のG7サミットに際する日米首脳間の接点に向けて、日米間の調整を更に加速化し、その前に再び協議を行うことで一致をしました。」

G7サミットは、6月15日から17日にカナダで開催される予定です。

一方、トランプ大統領は、5月30日、鉄鋼・アルミニウム関税を、6月4日から現在の25%から50%へと引き上げる方針を発表し、世界に対して関税政策を一層強化する姿勢を明確にしました。

また、5月8日にはイギリスからの自動車輸入に関して、年間10万台までの関税を10%に引き下げ、25%の鉄鋼関税を撤廃することで合意したと発表しています。

日米間の交渉においても、自動車の関税をイギリスと同様に引き下げることができるのかが注目されています。

今後の交渉展開に関する考察

ここからは、これまでのトランプ大統領の関税政策や発言を踏まえ、今後の交渉の合意内容について、あくまで現時点での筆者個人の見解として考察します。

日本政府の交渉担当者は、イギリスとの合意を参考にしながら、日本からの輸出台数に応じて関税率が段階的に変動するような、複雑な制度を提案する可能性があります。

日本とアメリカは互いにとって重要な経済パートナーであり、アメリカ側としても、日米間の交渉を早期に妥結し、国内外に向けて外交成果としてアピールしたい思惑があると見られます。

しかし、自動車関税をめぐる交渉は容易ではありません。

トランプ大統領はこれまで繰り返し、日本からの自動車輸入に対する不満を表明しており、米国内自動車産業の復興は彼の政治理念の中核をなしています。仮にイギリスと同様に関税を10%へと引き下げたた場合、米国の自動車産業や労働者層へのアピール効果としては不十分と受け止められる可能性があります。

一方、日本政府にとっても、自動車関税が現行の25%のままでは、国内の政治的に受け入れがたい状況です。そのため、複雑な関税率の導入などにより、最終的に一律25%よりも低く、イギリスの10%より高い、平均15〜20%程度の水準での妥結とならざるを得ないのではないでしょうか。

日本自動車産業への影響

仮に、自動車関税が20%程度で妥結されたり、現行の25%が維持された場合、日本の自動車メーカーにとっては経営上の大きな打撃となります。

トヨタ自動車は、2026年3月期の決算見通しにおいて追加関税を4月及び5月の2か月分のみ織り込んでおり、6月以降の関税の影響は現時点では織り込まれていません。

マツダやスバルなどは、アメリカ国内での自動車製造に比べて、日本からアメリカへの輸出比率の大きく、経営への影響はより深刻になります。

日産自動車は、たとえ関税がなくても厳しい経営状況ですので、特に予断が許されません。

日米関税交渉の行方は、自動車業界にとどまらず、日本経済全体に影響を及ぼす可能性があります。今後の日米首脳会談の結果に注目が集まっています。

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